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「食べることが好き」から何がはじまるか―その2―

投稿日:2024年05月09日

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「食べることが好き」という字面を見て,ああそういえば以前そんな記事があったなあ,と思い出した方はどのくらいおられるだろうか。詳しくは 「食べることが好き」から何がはじまるか をご確認いただくのが良いかとおもわれるが,簡単にいうと,世間話からはじまって,「食べるものが好き」な人の特徴を心理学の観点から研究してみるのも面白いのでは,と考えるようになった,という内容である。で,今回はその続きである。

 世間話から始まったこのテーマ,実際に学術的に研究してみた。有言実行である。思いつきのテーマをさくっと研究の枠組みでまとめ上げる,このフットワークの軽さ(適当さ?)は,自分の特徴の一つであろうか。ともあれ,やってみたのである。その研究で得られた内容をちょっとご紹介しよう。

 まず,大学生を対象に調査をおこなってみた。食べることが好きな人の特徴として,「たくさん食べる」や「いつも何を食べようか考えている」といった傾向が確認された。そのような食傾向には,子どもの頃に,家族と一緒に食料品の買い物をしたり,食事中に家族と食についての話をするといった食行動が関連していることが確認された。つまり,子供の頃の食に対する積極的な関わりが,成長してからの食べることが好きという傾向に影響している可能性が確認されたといえる。さらに,食べることが好きな傾向がある人は,精神的に健康な傾向があることも確認された。もちろん,精神的に健康であるからこそ食べることが好きに思える,という見方もあるであろう。とはいえ,何かしらのポジティブな結びつきが確認できた。ともあれ,これで,「過去の食経験→今の食べるのが好きな傾向→精神的健康」,といった流れがとりあえず明らかになったといえる。

 さて,このように,はじめは他愛のない会話から始まった興味や関心が,心理学という研究枠組みの中で,調査という研究方法によって,データとして実態が浮き彫りになるところまできた。これはあくまでも一例であるが,日々の人の行動について,調査や実験などで読み解いていくのが心理学であり,人が関わる行動すべてがその対象となりうる。美容整形などもテーマになるし,ひきこもりもテーマになる。SNSでの行動といったものから,場合によっては争いといったものもテーマになる。この自由さも,心理学の特徴の一つといえるかもしれない。

 心理学を専攻する学生は,大学では自由に研究テーマを設定して卒業論文という形で研究を進めていくことになる。その時に大事なのは,自分のやりたいテーマをしっかりと決めることであり,そのためには,日々の生活でたくさんの事柄や事象に目を向けている必要がある。日常での疑問や感心,好意,嫌悪など,目を向けたものがなにか心を動かしたのであれば,それは卒論で取り組むに値するテーマになると考えられる。ぜひとも,積極的に社会に目を向けて,考え感じながら生活を送って頂きたいと思う。卒業論文に関係なく,大事なことだと思われる。

追伸
実は,大学生を対象に調査を行った後に,成人を対象にさらにパワーアップした調査をおこなってみた。面白い知見がいくつも得られている。機会があったらお伝えできたらと思う。

こども心理学部

鈴木 公啓

鈴木 公啓
(SUZUKI Tomohiro)

プロフィール
専門:心理学
略歴:東洋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。
東洋大学や明治学院大学等の非常勤講師、東洋大学HIRC21のPD研究員を経て現職。

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