このページの修正はsingle.phpで作業します

「教える」ことで深まる学び―親子で救急体験

投稿日:2026年10月22日

● 投稿内容に関連するキーワード

 「救急」と聞くと、少し難しく、特別な知識や技術が必要だと感じる方も多いかもしれません。しかし、子どもと生活する中では、食べ物をのどに詰まらせる、転倒してけがをする、突然意識を失うなど、思いがけない出来事が起こる可能性があります。もしもの時に、そばにいる大人が「何かできる」ことは、子どもの命を守るうえで大きな意味をもちます。
 鳥海ゼミでは昨年度から「親子で救急体験」という地域連携イベントを実施しています。学生はまず消防署の普通救命講習を受講し、心肺蘇生(胸骨圧迫)やAEDの使用、異物除去などについて学びます。その後、学んだ内容を自分たちで整理し、親子に分かりやすく伝える方法を考え、救急体験当日は「教わる側」から「伝える側」となります。
 この活動で大切にしているのは、救急の知識を覚えることだけではありません。人に教えるためには、「なぜこの手順なのか」「どのように伝えれば相手が安心して取り組めるのか」を自分自身が理解していなければなりません。説明の言葉を考え、役割を分担し、参加する子どもの年齢や様子に合わせて声をかける過程そのものが、学生にとって深い学びになります。実際の親子とのやり取りでは、授業の中だけでは得られない緊張感や責任も生まれます。それを経験することで、保育者・教育者に求められる判断力、コミュニケーション力、協働する力を身につけていきます。
 また、保育・教育の現場では、事故を完全になくすことは難しく、事故を予防する力と、発生した際に適切に対応する力の両方が求められます。学生のうちに、子どもの安全を守る責任を具体的な体験を通して考えることは、将来、保育者・教育者として現場に立つための重要な準備となります。救急を「専門家だけが行うもの」ではなく、「身近な人の命を守るために自分にもできることがある」と捉えてほしいと考えています。
 当日は、人形を使った心肺蘇生、AEDの使用、乳幼児に起こりやすい異物除去などを、親子で実際に体験してもらいます。子どもたちは大人のまねをしながら真剣に胸を押したり、AEDに触れたりします。保護者の方にとっても、知識として知っていることを「実際にやってみる」機会になります。親子で一緒に体験することで、家庭でも「こんな時はどうする?」と話題にしていただけることを期待しています。
 救急対応は、できれば使う場面がないことが一番です。しかし、いざという時に動けるかどうかは、事前に知り、体験したことがあるかによって大きく変わります。学生が学び、その学びを地域の親子へ伝え、さらに親子の反応から学生が学び直す。この循環こそが、ゼミで救急体験を行う大きな意義だと考えています。これからも、子どもの健康と安全を守るための学びを、大学の中だけにとどめず、地域の皆さんと共有していきたいと思います。

こども心理学部

鳥海 弘子

鳥海 弘子
(TORIUMI Hiroko)

プロフィール
専門:保育学、小児保健
略歴:白梅学園大学大学院 子ども学研究科 修士課程を修了。
長年、公立保育所の看護師として勤務。秋草学園短期大学 専任講師を経て現職。看護師、保育士。

PageTop