行動分析学は、BFスキナーによって創始された行動主義的心理学の一つです。多くの心理主義的な立場とは異なり、個体の「行動」の原因を個人の内部ではなく、外部である「環境」に求めるところが違います。
このような立場は、問題を抱えた当事者を支援するときに、大変大きな利点があります。それは、もしその支援がうまく行かなかったときに、その責任を困難さを抱えている個人に負わせるのではなく、支援者側の責任とすることです。
なぜ、支援者側の責任とすることに利点があるかというと、単なる言い訳として、当事者の特性や傾向に原因を帰するのではなく、失敗によって支援者は新たな支援策を見出すことができ、そしてその個人にとって最もよい方法を考えることを勇気づけるからなのです(出口,1987)
また問題を抱えた個人の社会的にネガティブな面や負担に感じる面ばかりに着目するのではなく、その人の強みやより負担なく改善が可能な面に着目します。そういったポジティブな「行動」の頻度や強度が増加させることで、相対的にその個人のネガティブな面を減少させることができます。このような支援のあり方は、ただでさえ困難を抱えている当事者の「支援を受けるため」の困難さを低減させ、支援者にとってもより効果的な支援方略を選択することを勧めます。
行動分析学に基づく対人援助においては、このように支援の対象となる当事者についてだけでなく、支援者自身がどのような社会的な影響のもとで支援に対する判断が行われ、その支援が継続されるのかといった、当事者と支援者の「随伴性」自身が研究及び実践の対象となります。たとえば、2020年に開始された公認心理師制度のように、支援者自身の環境要因も変化しつつあります。対人援助職としての公認心理師が、社会の中でどのように位置づけられていくのかは、本学のすすめている公認心理師カリキュラムによる育成のあり方やその成果にかかっていると言えるでしょう。