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若者からの相談

投稿日:2025年06月05日

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 以前、若者から相談を受けた。様々なミスや出来ないこと、苦手さが数多く重なり合い、毎日が苦しいという。その話を聞いて思った。「ああ昔の自分みたいだ」

 私も幼い頃から「なんか違うなぁ」「みんなこう感じているのだろうか」と不思議に思うことがたびたびあった。私と周囲の感覚は、どうやら違うみたいなのだ。

 私の母親は「お前は小さい頃、手を繋いでいても振りほどいて走るので、いつも手首を赤くなるまで掴んでいたよ」「乱暴だしねえ」とよく話していた。しかし私には動き回っていた記憶はない(自分では大人しい子のつもり)。
 小学校では、夏休みの宿題をまったくやれず、気が付くといつも最終日であった(父親に「お前はどういうつもりだ」といつも怒られた)。同級生の女の子につい余計なことを言って傷つけたことも数え切れない(本当は仲良くしたかった)。離席や不規則発言もあったようで、通知表には必ず「落ち着きましょう」「きちんとしましょう」と書いてあった(落ち着くってどういう状態?)。中学校になると、まったく勉強がわからなくなった。体育と国語以外はいつもビリであった(これホントの話)。受験が近くなると、学校の窓ガラスを破壊したい衝動に駆られた(尾崎豊を聴いていた)。
 高校ではバンドを組んだが、人間関係が作れず空中分解した(バンドは小さな社会だった)。大学でお付き合いした方とはケンカが絶えなかった(御迷惑をおかけし申し訳ありませんでした)。教師になってからも同僚と衝突し、揉めることもたびたびであった(場が読めずすみませんでした)。いつもひとりだったが、自分でもひとりを好んでいる感覚もあった。音楽と映画だけが友だちだった。歳を重ねた今ではさすがにうまくやる技をある程度身につけたが、基本的な困難は変わらずに現在に至っている。
 なぜだ?なぜ人が普通に出来ることが、自分にはうまく出来ないのか??それが私の長年の謎であった。

 どうやらそれは、私自身の特徴にあったらしい。私の考える私の特徴は、「思考を通して的確に行動できない」「やり切ることができない」「自分のやり方に固執する」「社会的立ち振る舞いができない」「他者の心を読み取れない」などである。特別支援教育の世界ではこれらの特徴を「特性」などと呼ぶが、だいたい他者との比較において「できない」「難しい」「ダメだ」とネガティブ思考に陥る。傷つく。特に若いうちはしんどい。

 冒頭の若者は、話の途中で泣き出してしまった。これから何十年もこうして生きなければならないかと思うと、心底辛いという。わかる。目に見えない困難って辛い。
 しかし、だ。諦めるのはまだ先だ。人は必ずいいところがある。強みがない人はいない。それを認めてくれる人もどこかにいる。まだまだ勝負はついちゃいない。人生の時間が長くなったのだから、強みを足掛かりにゆっくり成長すればよい。私もそうやって生き延びてきた。学費の問題はあるが、ゆっくり発達する場としてぜひ大学という場も活用してほしいと思う。新しいまだ知らない世界がきっとあるはずだ。
 そして、そのための試行錯誤を寛容に見守れる社会がほしい。これからの時代は、それぞれの特性や抱えている苦しさを認め合う世の中がいいなぁ、と心から思う。

こども心理学部

太田 英樹

太田 英樹
(OTA Hideki)

プロフィール
専門:特別支援教育
略歴:東北福祉大学社会福祉学部社会教育学科 卒業
東京都立特別支援学校 特別支援教育コーディネーター
千葉大学大学院教育学研究科特別支援専攻 修了
東京未来大学こども心理学部 准教授

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