4月になりました。大学には学生さんの姿が多く見られ、とてもにぎやかです
年度の変わり目である4月には、さまざま出会いがあり、新しいことを始めたくなりますね。皆さんは何か始めていますか?
うちでは、少し前から高校生の娘がジョギングを始めました(暖かくなったということもあると思いますが)。体がなまり切っているからだそうです。
私は運動やスポーツが苦手であまり何もしていないのですが、思い返せばもう10年くらい、ジュニアスポーツに関わる大人たちについて研究しています。これは、私と共同研究者である藤後先生・井梅先生のお子さんがそれぞれジュニアスポーツをやっていて、チームの様子や参加のスタンスはかなり異なるものの、共通の「気になること」があったからです。親子関係のこじれや期待された子どもが感じるストレスなど色々気になるポイントはありますが、私は、社会心理学と言って、他の人たちや集団との関係の中での心理学が専門ですので、集団としての保護者たちの影響や、保護者と指導者との関係が子どもたちに与える影響について特に関心があります。実際に、指導者の影響は大きく、練習の仕方、試合に対する態度、褒め方・叱り方、自主性の尊重具合などを通して、子どもたちにスポーツ観を伝えることになります。
このスポーツ観について、常々感じることがあります。
ものの見方には、大きく分けて、細部ではなく全体を見る包括的思考と中心的な事物をじっくりと見る分析的思考があると言われています。これは文化心理学の中でよく使われていて、東洋人は包括的思考、西洋人は分析的思考をしがちであるとさまざまな研究で示されています。でも、いつも誰でも東洋人が包括的思考をするかと言うと、そういうわけでもありません。
スポーツの指導者は、そして子どもたち自身も、「勝利」や「技術」にばかり注目する傾向があります。勝ち負けがあることはスポーツの楽しさの一部ですし、勝ったら嬉しいのは当然です。また、指導者の方は、一般にスポーツが大好きで、得意で、スポーツを重要視していることが多いです。技術力向上に目が行きがちなのはそのためかな、と思います。でも、スポーツは、もっと広いものです。上手になるのもいいことだし、身体が健康に育つのもいいのですが、それに加えて、頑張ればできるという効力感、勝つために行う工夫から育つ問題解決能力、地道に努力を続けることで育つ忍耐力、そして仲間と一緒にやっていく中での社会性や仲間そのものなど、たくさんのものを得ています。
勝つこと・上手になることが嬉しいのは当然ですが、それ以外にも目を向けてほしい。そんなことを考えながら、アマチュア指導者向けの本(「ジュニアスポーツコーチに知っておいてほしいこと」)や部活動外部指導員向けの本(「部活動指導員ガイドブック基礎編」)を書いてきました。このたび、「部活動指導員ガイドブック応用編」が2022年4月末に出ます。良かったらお手に取ってみてください。