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ドキュメンタリー映画が描き出す子どもの今

投稿日:2025年12月04日

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 ドキュメンタリー映画は、人々の日常の姿をリアルに描き出し、私たちに新たな視点を与えてくれます。私は今年、『大きな家』(1)と『小学校〜それは小さな社会〜』(2)という2つの作品を映画館で観ました。どちらの作品も、子どもの日常とそれを見守る大人の姿を丁寧に描いています。
 『大きな家』は、児童養護施設で暮らす子どもと施設職員の生活を記録したドキュメンタリー映画です。この映画は、観る者に児童養護施設で暮らす子どもの声に耳を傾ける機会を提供します。映画には、幼児、小学生、中学生、高校生、就職を控え退所する者、退所した大学生と、年齢、性別の異なる複数の子どもの施設での生活が記録されています。この作品の特筆すべき点は、複数の子どもに焦点を当てながら、一人の人間の成長過程を追うように構成されている点にあります。このような構成を採用することで、施設で暮らす子どもたちが、何に悩み、迷い、自分の将来を見据えていくのかを、子どもの普遍的な成長過程として描き出そうとしているように思います。
 本作に登場する子どもは、一人ひとり異なる生育歴や背景をもちますが、子どものプライバシーを守るため、多くは語られません。しかし、作品の中で交わされる子どもと子どもの会話や子どもと職員の会話、子どもが制作者に語る言葉を通じて、子どもたちが施設の仲間や職員、なかなか会えない家族にどのような思いを抱きながら過ごしているのかを想像することはできます。
 「カメラの向こうの世界を想像する」という行為に浸るのは、ドキュメンタリー映画を映画館で観る醍醐味だと思います。ドキュメンタリー映画には、実際に起きた出来事や人々の発した言葉が記録されていますが、その記録は、人々の生活全般からみれば、ごく一部の限られた瞬間です。現実には、そこに至るまでの過程があり、その後にも続いていく人々の生活があります。だからこそ、ある人が発した言葉に込められた思いを想像したり、数ある記録の中からその場面を取り上げた監督の意図を想像したりすることで、作品が描き出す世界に近づくことができるのだと思います。
 こうした想像力を掻き立てる、もう一つのドキュメンタリー映画が『小学校〜それは小さな社会〜』です。本作では、小学1年生と小学6年生の1年間の学校生活が、子どもと先生、両者の視点から描き出されていきます。私が本作を初めて観た時の印象は、「私の記憶の中の小学校生活とほとんど変わってない!」でした。子どものランドセルがカラフルだったり、教室に大きなモニターがあったりと、変わっている部分もあります。それでも、先生が子どもに投げかける言葉、行事に取り組む子どもの姿、1学年の違いがとても大きいこと、先生たちの終わらない苦悩。これらは、今も変わらず小学校にありました。
 かつて小学生だった自分が慣れ親しんだ学校生活を、観客として客観的に観た時に、あなたは何を思いますか。子どもの今を考えたい人におすすめの2作品です。

(1)竹林亮監督・編集,『大きな家』,CHOCOLATE Inc.,2024年,(映画『大きな家』公式サイト,2025年11月26日取得,https://bighome-cinema.com)
(2)山崎エマ監督・編集,『小学校〜それは小さな社会〜』,2023年,ハビネットファントム・スタジオ,(映画『小学校〜それは小さな社会〜』公式サイト,2025年11月26日取得,https://shogakko-film.com)

こども心理学部

越川 葉子

越川 葉子
(KOSHIKAWA Yoko)

プロフィール
専門:教育学、教育社会学
略歴:立教大学文学部教育学科 卒業
立教大学大学院文学研究科教育学専攻博士課程前期課程 修了
立教大学大学院文学研究科教育学専攻博士課程後期課程 単位取得退学
立教大学文学部教育学科 助手
秋草学園短期大学地域保育学科 専任講師・准教授を経て現職

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