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モノを長く使おうとする気持ち

投稿日:2024年02月22日

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最近、ダイニングテーブルを購入した。13年も好みのテーブルを探し続けてようやく巡り合った逸品。マホガニーで作られた両サイドを伸縮できるこのダイニングテーブルは、イギリス製で日本のもよりも天板の位置が高い。
もともとアンティークが好きで、アンティーク風の家具を揃えていたが、本物は初めてだ。 このダイニングテーブルは、90年ほど前に作られたもので、長い年月を経ていても古臭い感じはなく、却って、ずっしりとした重厚感さえ感じる。

ところが、先日、同僚にこのテーブルの話をしたところ、100年以上たったものがアンティークで、100年未満はヴィンテージだよと教わった。おー、なるほど!このお気に入りのテーブルがアンティークと呼べるようになるまで、あと10年必要だ。
90年間、たくさんの料理を並べ、素敵な食卓を提供してくれたであろうこのテーブル、もしかしたら、いくつかの家族の団欒をもたらしたであろうこのテーブル。新品のものでは味わえないけど、このテーブルなら、毎日、見るたびにそんな事を考えることができて本当に楽しくなる。アンティークになるまで残り10年、私が大切に使っていこう。そして、その先も。

モノを大切に使う気持ちにさせてくれた今回のテーブル。家具だけでなく、衣生活にも当てはまる。家具を購入することは頻繁にないが、衣服はどうだろうか。
近年では、環境問題が持ち上がって、一見、衣服のリサイクルやリユースも盛んになったように見える。けれども、古着のリサイクル意識が高まった結果、リサイクル工場はキャパオーバーしている現状もある。これまで綿は機械類の油を拭き取る雑巾のような製品(ウエス)に、羊毛は自動車の内装材などにリサイクルされてきたが、ポリエステルなどの混紡繊維が多く、それも難しくなっているという*。

衣料品のリサイクルを伴う断捨離は、罪悪感を伴わず、新しい購買意欲にも繋がってしまう。リサイクルの前にモノを大切にする気持ちを持ち、モノを手放さない(長く使う)という選択で環境を守るのはどうだろう。
この、モノを大切にしよう(長く使おう)という気持ちを育む1つには、自分で作ることを通して、その大変さを体験しつつ、モノに対する愛着を持つことが挙げられる。また、作ることを通して適正な金額を考えることにもつながる。

今、小学校の家庭科では、身にまとう衣服を製作しないこともあり、被服実習とは呼ばなくなってしまった。もしかしたら、これからもっと縫う事は少なくなるかもしれない。でも、トートバッグでもランチョンマットでも自分で作ることが大切な体験。綺麗に仕上げるのも必要だけど、自分でやる、を大切にして、モノを大切にする心(長く使おうとする心)や適正なコストを考えることができる消費者を育てたい。

*参考:中村和代・藤田さつき、『大量廃棄社会』、光文社、2019年。

こども心理学部

小林 久美

小林 久美
(KOBAYASHI Kumi)

プロフィール
専門:家庭科教育
略歴:九州女子大学家政学部卒業
九州女子短期大学家政科助手
福岡教育大学大学院修士課程教育学研究科卒業
九州女子大学家政学部助手・同大学人間科学部講師
東京未来大学こども心理学部准教授をへて現職

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