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「作ることが好き」の昔と今 -巨大ロボ工作の思い出と試作に悩む日々-

投稿日:2022年05月19日

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 私は、保育者養成科目の造形表現指導法を担当しています。造形表現というと、小学校の図画工作や中学校での美術のように、主に絵を描いたり、ものを作ったりする分野です。

 さて、皆さんは、描いたり作ったりすることは好きですか?私は作ることが好きです。暇を見つけては何かをこそこそと作って、完成品を見つめ、ひとりにんまりと満足感に浸っています。たまに、人から「それを、自分でやってみようとする?」と言われるほど、特に「作ること」に関しては、挑戦的といえるほど好きなようです。どうして、これほどまでに作ることが好きになったのか、振り返ってみると幼いころの思い出がきっかけのように思います。その思い出とは、父お手製等身大ロボットです。

 幼いころ、なぜか我が家には模造紙サイズのとてもしっかりとした硬い厚紙が何枚もあって、ある日、父が私(4歳)の等身大のロボットを作り始めました。1枚の紙に型を取り切って貼り合わせて立体ができていく様子を、私はワクワクしながら見ていました。そしてテープで止めることなど4歳の私に出来ることは手伝わせてもらい、ただ見ているだけでなく工作に参加しました。「こんなの作るよ」という父の言葉通りに、休日のたびに、少しずつ、頭、胴体、手足と作り足され、立体のロボットが出来上がっていきました。1枚の紙から形が出来上がっていく様子は不思議でもあり楽しくもありました。完成すると、当時の私と同じ身長で、横に並んで記念撮影をしました。

 この巨大ロボ(当時の私と同じサイズなので、完成品は私にとって巨大でした)工作の参加とその完成が、私が「何でも自分で作れる」と思い始めたきっかけのように思います。実際は、何でも作れるといったことはありませんが…主に作ることに関して「やってみること」「試してみること」には、とても前向きになったと思います。そして、「作ることが好き」につながっているのでしょう。

 授業や子どもたちの参加するイベントなどの試作でも、失敗を繰り返しながら完成させて達成感と満足感にニヤリとしています。いつも何か新しいネタを探して、本やネットなど、いろいろな情報を集めては、実際にやって難易度や材料などを試しています。

 そんな中、最近は、子どもの造形表現活動と環境問題との関係を思い悩んでいます。

 子どものころ、お菓子の空き箱や廃材の発泡スチロール、プラスチック製のストローが工作の材料となっていた記憶はありませんか?そして廃材をべたべたとテープやボンドで貼り合わせて楽しく遊んだ覚えはありませんか?この楽しかった思い出は、実はリサイクルとは縁遠かったり、分別に非常に手間がかかったりするものです。さらには、環境にやさしい素材へと社会が変化していく中で、廃材となっていたそのもの自体がなくなりつつもあります。幼児教育では、子どもにとって身近にあるもので楽しく遊ぶことができることを大事に考えます。廃材は、いろいろな想像を掻き立てる大事な素材と言えます。しかし、リサイクルやごみの分別などを考えると、安易に大事な素材としてだけ考えることは難しいです。1つの面だけではなく、様々なことを考え合わることが大切なのだろうと思います。

 私の巨大ロボ工作の思い出から、子どもの頃の体験が与える影響の大きさを実感しています。だからこそ、子どもたちが身近な素材で楽しく遊ぶ、工作する経験はたくさんしてほしいと思います。

 子どもの造形活動と環境問題との関係を、皆さんも考えてみてください。

こども心理学部

木内 菜保子

木内 菜保子
(KIUCHI Naoko)

プロフィール
専門:幼児教育
略歴:岡山大学教育学部幼稚園教員養成課程卒業
岡山大学大学院教育学研究科学校教育専攻修了
中国短期大学、川崎医療短期大学、関西福祉大学の非常勤講師
2006年中国学園大学子ども学部専任講師、2010年同大学准教授
2011年東京未来大学こども心理学部こども心理学科准教授、2020年同大学教授

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