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コロナ禍の中でストレスに負けない力を考える

投稿日:2022年05月26日

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 2022年のゴールデンウィークは3年ぶりに緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による行動制限がありませんでした。大学も対面授業を実施し始めましたがまだ先行きが読めず、不安もある連休明けにこのコラムを書いています。私の専門は主に心の健康(メンタルヘルス)や心のケアについて考える臨床心理学と呼ばれる分野ですので、このコロナ禍が心にどのような影響を与えることになるのだろうかと思いながら過ごしていました。

 コロナ禍の影響で私自身が非常に困ったのは大学の授業でした。それまではスクリーンにプレゼンテーション資料を投映したり書き込み式の配布資料などを使ったりして学生の反応を見ながら授業をしていましたが、感染症予防のためオンライン授業に変更せざるをえなくなると、今までの授業のやり方を大きく変える必要が出てきたのです。授業を受ける学生も大変だったでしょうし、教員もそれはもう大パニックです!(学生も他の先生もウンウンとうなずいてくれているであろう姿が目に浮かびます…)二度とやりたくないほどの大変さではあったのですが、振り返ってみると、以前から私が関心を持って調べていた「レジリエンス」や「ストレス関連成長」、「心的外傷後成長」といったテーマにつながっているのでないかと思い至りました。

 「レジリエンス」とはストレスに負けず押し返す回復力のことであり、「ストレス関連成長」や「心的外傷後成長」はストレスや傷つき体験をきっかけにして乗り越えた後の方が以前の状態よりも成長していることを指します。もちろん回復が難しくなるほど大きなストレスはない方がいいですし、成長したからといってつらい体験がなかったことになるわけではありません。大変なことや悲しいこと、残念なことがあった人もいたかもしれません。それでも多くの人がこの未曾有の事態を乗り越えて今に至っているという側面もあるということです。

 そうしたストレスに負けない力を大学の授業でも感じることがありました。今の大学2年生や3年生はこれまでの授業のかなりの部分をオンラインで受けてきました。不自由な状況で大学生活を送らなければならなかったにもかかわらず、対面授業に戻ると例年以上に自主的、積極的に授業を受けている印象があり驚きました。コロナ禍では手取り足取りの手助けが提供されることを期待するのは難しかったことが、そうした力を発揮させたのかもしれません。望ましいきっかけではありませんし、未だ進行中の状況ではありますが、結果としてストレス状況を乗り越える力を学生自身が成長させたのだと思います。

 どういう環境やサポートがあれば私たちがもともと備えているストレスに負けない力が十分に発揮されるのでしょうか。こうしたことを少しでも明らかにしていくことができれば、臨床心理学に携わる者の端くれとして多少は社会の役に立っていると言えるようになるのかなとそんなことを考えたコロナ禍でした。

こども心理学部

川原 正人

川原 正人
(KAWAHARA Masato)

プロフィール
専門:臨床心理学
略歴:筑波大学大学院人間総合科学研究科退学。
目白大学人間学部心理カウンセリング学科助手及び助教、川村学園女子大学文学部心理学科助教、航空自衛隊第7航空団基地業務群衛生隊防衛技官を経て現職。
大学附属相談施設、スクールカウンセリング、自衛隊医務室などで心理臨床活動を行ってきた。

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