
近年、目覚ましい発展を遂げている生成AIは私たちが知りたいことを入力するとまるで人間と対話しているかのような自然なやり取りで回答を返してくれます。今後ますます私たちの生活に浸透していくことは間違いないでしょう。心の健康問題を扱う臨床心理学的支援の現場においても、カウンセリングを利用されている方から生成AIに悩みや困りごとを相談しているという話を耳にする機会が増えてきました。
私がこれまでに聞いた限りでは生成AIの評判は概ね良好です。相談内容は人それぞれですが、相手が生成AIだからこそ時間や内容を気にせず率直に何でも話せる点が魅力のようです。カウンセラーも相談者の方が安心して話せるような雰囲気づくりを常に心がけていますが、この点においては確かに生成AIに軍配が上がるのかもしれません。
もっともカウンセリングルームの中でリアルな対人関係が発生する(その中には時に少しの緊張感も生まれる)からこそ、言葉の奥にある感情や語られない背景までも理解でき、問題の核心に迫り、解決へと繋がることもあります。この点は今のところ生成AIにはまだ難しい領域でしょう。生成AIを利用されている方もそのことを実感としてよく理解しており、「生成AIに気軽に相談できるようになったからといってカウンセリングが全く必要なくなるわけではない」とおっしゃっています。
では、生成AIが急速に発展していく中でカウンセラーという専門家は今後どのような役割を求められるのでしょうか。一つには、生成AIでは代替できない人間ならではの共感性や深い洞察に基づいた支援がより一層重要になると考えられます。相談者の言葉の裏側にある思いを汲み取り、その人の苦悩や悲しみ、困り感を理解する、そしてその深い理解に基づいて温かく寄り添い、オーダーメイドのサポートを提供する、こうした人間ならではの共感と個別化された支援こそがカウンセラーの強みになってくるでしょう。
また、生成AIをうまく活用したAIアシステッド・カウンセリングやAIアシステッド・セラピーといったアプローチも考えられます。情報の収集や分析といった作業は生成AIの得意とするところです。そうした生成AIによってもたらされる情報や分析結果にカウンセラーが専門的な視点から個別性の高い解釈を加えたり、深い理解に基づいたきめ細やかな感情的サポートを担うことでより効果的な支援が提供できる可能性があります。
一方で、現状では生成AIを鵜呑みにして信じ込んでしまうことによる問題も懸念されます。生成AIは大量のデータに基づいて回答を生成しますが、その情報が必ずしも正確であるとは限りません。特に心の健康問題には複雑で多岐にわたる要因が絡み合っていることが多く、表面的に見える情報だけでは本質を見誤る可能性があります。生成AIの回答を絶対的なものとして捉えてしまうとかえって問題を深刻化させたり、別の問題を引き起こしたりするリスクがあります。
したがって、人間のカウンセラーには今まで以上に専門的知識と経験に裏付けられた批判的な視点を持って吟味することのできる力が求められるように思います。生成AIが発展しても人間のやることがなくなるのではなく、発展するからこそ新たなことを学び、研鑽を積む必要があるのだと支援に関わるものとして身の引き締まる思いです。

