あなたの善悪の基準は何ですか?
なぜ,人を傷つけてはいけないのか。
なぜ,悪いことをしてはいけないのか。
なぜ,モノを大切にしないといけないのか。
私が大学2年生だった頃の話。
とんかつやさんで初めてのアルバイト。
雪が降り積もる閉店間際のある日の夜。
外との気温差で透明の眼鏡が白く曇り,「見えない…見えない…」と店内に入ってきたお客さんが,無事食事を終えて店から出ていった。
キャベツや米粒一つも残さず食べてくれたそのお客さんの食器を重ね,ホールに運ぼうとした瞬間,手からグラスが滑って落ちた。
ガシャーン!!
(あ,割っちゃった…。どうしよう…。)
ガラスの割れた音が店内に響いたと同時に,一緒に働いていたパートの黒田さんが私のところに走ってきて,穏やかに,そしてゆっくりとこう言った。
「あら,大丈夫?ケガしてない? カタチあるものはいつか壊れるからね」
黒田さんはそれ以上何も言わず,わたしよりも先に,割れたガラスの破片を一つ一つ拾い始めた。
(あ,割っちゃった…。どうしよう…。)
この心の声に続くことばはなんだろう。
多くのこどもは,「怒られる…」と続くかもしれない。
怒られるから割ってはいけないのか。
怒られるから割らないようにするのか。
誰かに怒られないためにモノを大切にしないといけないのか。
私が割ったガラスの破片を,何も言わずに拾い続ける黒田さん。
こどもたちに,モノを,そして人を大切にしてほしいと願う時,あなたは保育者,教育者,もしくは一人の大人として,どんなことばを使って伝えようと思いますか?
そして,どんな姿をこどもたちにみてほしいと思いますか?
こどものこころを育てるとはどういうことか,ぜひ,考えてみてくださいね。