
テーマパークに遊びに行ったとき、楽しいアトラクションはあっという間に終わってしまうのに、待ち時間は永遠に続くかのように長くて退屈……。こんなふうに、時間の感じ方は場面や状況によって大きく変わります。それでは、どうして主観的な時間の流れ方は変化するのでしょうか?今回は認知心理学の観点から、その要因を二つ紹介します。
〈注意と時間〉
一つ目の要因は、注意です。注意とは心の機能のひとつで、私たちは注意を向けた情報を意識にのぼらせることができます。そして、何かに集中しているときには、時間の経過を意識する機会が少なくなることがあります。Ehret et al.(2020)の研究では、数字を順番につないで絵を完成させる、いわゆる「点つなぎ」の課題に取り組んでいるときには、特定の課題に取り組まないときに比べて、時間が速く流れるように感じられることが報告されました。課題に集中している間は、「今、何分経っただろう?」などと、時間そのものに注意を向ける機会が少なくなります。そのため、ふと時計を見たときに、初めて「もうこんな時間?」と気づくことがあるのです。何かに没頭していると時間があっという間に感じられるのは、こうした注意の働きが関係していると考えられます。逆に、何もすることがなく「まだかな、まだかな……」と時間の経過を意識していると、時間がなかなか進まないように感じることがあります。
〈ストレスと時間〉
二つ目の要因は、ストレスです。例えば、試験結果の発表を待つ時間は、人によって感じ方が異なります。不安で落ち着かない人もいれば、それほど気にせず気楽に過ごせる人もいるでしょう。Rankin et al.(2019)の研究では、中間試験や司法試験の結果を待つ人々を対象に、待っている間の心理状態と時間の感じ方が調べられました。その結果、不安や苦痛を強く感じている人ほど、時間がゆっくり流れるように感じる傾向が報告されました。また、Van Hedger et al.(2017)の研究では、ストレスが時間の感じ方に与える影響が実験的に検討されました。参加者は、カメラの前でスピーチをするというストレスのかかる課題を経験し、その前後に、画面に表示された画像の提示時間を推測する課題に取り組みました。その結果、ストレスを経験した後には、画像が実際よりも長く表示されていたように感じられる傾向が見られました。このように、不安やストレスを感じているときには、時間がゆっくり流れるように感じられたり、実際の時間よりも長く感じられたりすることがあります。ただし、時間の感じ方は、ストレスの種類や課題の内容などによっても変わるため、ストレスがあれば必ず時間が長く感じられるというわけではありません。
〈おわりに〉
ここで紹介した注意やストレスのほかにも、周囲の情報の量や記憶、気分など、さまざまな要因によって時間の主観的な流れ方は変化します。ぜひ、自分がどんなときに時間が速く、あるいは遅く流れるように感じるのか、観察してみてください。
引用文献
● Ehret, S., Roth, S., Zimmermann, S. U., Selter, A., & Thomaschke, R. (2020). Feeling time in nature: The influence of directed and undirected attention on time awareness. Applied Cognitive Psychology, 34(3), 737-746.
● Rankin, K., Sweeny, K., & Xu, S. (2019). Associations between subjective time perception and well‐being during stressful waiting periods. Stress and Health, 35(4), 549-559.
● Van Hedger, K., Necka, E. A., Barakzai, A. K., & Norman, G. J. (2017). The influence of social stress on time perception and psychophysiological reactivity. Psychophysiology, 54(5), 706-712.

