
ある日の出来事
「パパ~とんてぷーぱーないよ~」と息子の呼び声。
とんてぷーぱー???何のことかと思い、駆け付けると・・・
トイレのトイレットペーパーが切れておりました。
このときの息子の年齢は2歳。
自分で平仮名、カタカナを読んでモノの名前を覚えるわけではなく、基本的には日常会話、自然と流れる音楽など生活環境のなかで言葉を獲得していきます。
そのなかで「トイレットペーパー」が「とんてぷーぱー」と聞こえたようです。
こうした子どもの言語の獲得や習得について、有名な学説を紹介いたします。
チョムスキー(Chomsky, N.1928-)は、言語獲得についてLAD(Language Acquisition Device)を提唱します。要約すれば人間が言語を獲得するとき、言語(Language)を獲得、取得(Acquisition)する、装置(Device)が備わっているという考え方です。チョムスキーはLADが生得的、つまり人間には元々言語処理する能力が備わっているモノとして捉え、それが機能することで言語獲得がなされると想定しています。
一方、ブルーナー(Bruner, J. 1915-2016)は、言語獲得についてLASS(Language Acquisition Support System)を提唱します。要約すれば人間が言語を獲得するとき、言語(Language)を獲得、取得(Acquisition)する、支援、手助け(Support)する、方式、システム(System)が重要であるという考え方です。ブルーナーは生得的とは捉えず、大人や他者との言語コミュニケーションによって言語獲得がなされると想定します。
トイレットペーパーという言葉を聞き、息子のLADが「とんてぷーぱー」と処理したのか、親子の日常会話のなかでトイレットペーパーを「とんてぷーぱー」として認識し、LASSを発揮したのでしょうか。どちらも正解なような気がします。
いずれにせよ、言語に関わらず人間の成長発達において、自然と一人で、独学で知識、能力を獲得、習得するのではなく、LAD、LASSといった要因や環境との相互作用によってなされているのだと感じます。
初等教育を中心に、主体的・対話的で深い学びが標榜されて久しいですが、その根幹は友達・仲間同士の協働、教職員や地域の人との対話といった他者との相互作用に支えられています。教育現場に関わらず、それは家庭においても変わらないのではないでしょうか。
追記
ふと思うのです。
「とんてぷーぱー」ではなく、「トイレットペーパー」と正しく言えて欲しいと願う反面、「とんてぷーぱー」という息子を愛おしく思う感情・・・
親というのはつくづく贅沢な生き物であります。