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練習したのにうまくいかないのはなぜ?

投稿日:2026年01月23日

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 先日、心理専攻社会心理学領域の卒論発表会がありました。発表時間は一人5分、質疑応答4分です。一日20名以上が発表するため、5分を超えた時点で発表終了になる厳しいルールです。
 卒論発表会は、学生たちが積み重ねてきた努力の集大成です。日向野ゼミの学生たちも、研究成果や自身の研究の面白さを伝えようと、入念な練習を重ねて発表に臨みました。ですが、当日は制限時間内に発表することができず、自分の研究の「ウリ」を伝えきれないまま、大変悔しい結果になったのです。「練習では、4分30秒で終わるはずだったのに」、「練習通りにいかなかった」と複数の学生が肩を落としていました。
 制限時間内に発表できなかったことは、決して学生の努力不足ではありません。むしろ、努力を惜しまないゼミ生たちです。それなのに、どうして練習通りにいかなかったのでしょうか。こうした現象は、ザイアンス(Zajonc,1965)によって提唱された「社会的抑制」によって説明可能です。
 社会的抑制とは、観察者や共行為者(一緒に何かをする人)がいることによって、パフォーマンスが低下してしまう現象です。社会的抑制は、どんなときでも生じるわけではありません。社会的抑制は、不慣れなことや上手くできないことに取り組むとき、観察者や共行為者がいると生じやすくなります。卒論発表会は、「不慣れな」状況であり、発表が苦手な学生にとっては「上手くできないこと」でしょう。一人で練習していた時は制限時間内に発表できていても、発表会という不慣れな場のうえ、参加者(観察者)という多くの人の目があります。こうした場では、評価懸念を起こしやすく、少し言い淀んだだけでもその後の言葉がうまく出てこなくなってしまうのです。
 また、「うまくできなかったらどうしよう」と考え出すと、気になって仕方がないことがあります。そのような時、「気にしない!」と自分に言い聞かせたことはありませんか?実は、この「気にしない」が、「気になる」を引き起こす原因になります。これは、「思考抑制の逆説的効果」といわれる現象です。思考抑制の逆説的効果とは、あることがら(思考)を考えないようにすればするほど、そのことがらに関連した思考が頭に浮かびやすくなってしまう現象のことです。考えないようにするためには、浮かんでくる嫌なイメージや気分を抑えこもうと多くのパワーを要するため、頭の中でその情報が活性化してしまうという悪循環に陥ります。むしろ、気になることが頭に浮かんできても、無理に消し去ろうせずに自然にまかせておいたり、別のことを考えるようにしたりするほうが、気になることに関連する思考は増幅しません。
 さて、卒論発表会で悔しい思いをしたゼミ生たちですが、この雪辱を果たす場は、大学生活ではもうありません。この経験を糧に、社会に踏み出し、活躍してくれることを願うばかりです。

こども心理学部

日向野 智子

日向野 智子
(HYUGANO Tomoko)

プロフィール
専門:対人・社会心理学
略歴:昭和女子大学大学院生活機構研究科後期博士課程修了
東洋大学21世紀ヒューマン・インタラクション・リサーチ・センターPD(2006年)
2007年~2011年、立正大学心理学部特任講師(2007年~2011年)
2013年4月東京未来大学こども心理学部専任講講師
2017年4月東京未来大学こども心理学部准教授

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