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地域の歴史を学ぶ意義とその実践

投稿日:2025年01月23日

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 大学での学びは、一般的には教室での座学が中心となります。しかし、多くの学問は、座学だけでは十分に学び取れるものではありません。私が担当している日本史関連の授業も、その例外ではありません。私は江戸時代と明治時代の歴史、とりわけ両時代の地域社会の歴史を専門としています。例えば、私が授業でいくら足立区の歴史について熱心に語り、どのような地域社会が形成・展開してきたのかを説明しても、受講生にはその具体的な姿をイメージしにくいものです。ましてや、そうした歴史の積み重ねの上に現在の足立区が成立していると説いても、区内の関連史跡を巡ったり、博物館を訪れたりしない限り、十分な学びにはなりません。こうした理由から、東京未来大学では学外授業も重視されています。
 私は授業科目によって、特に未来大が所在する足立区内の歴史を説明しながらフィールドワークを実施しています。その際、欠かせない場所が足立区の中心街である北千住です。では、なぜ北千住が現在のような発展を遂げているのでしょうか。その要因はいくつかありますが、最大の要因は江戸時代から交通の要衝として発展してきたことです。北千住駅にはJRや東京メトロなど4社5路線が乗り入れており、2018年のランキングでは世界で6位の乗降者数を誇っています。これは東京駅を上回る数字です。
 北千住の起源は江戸時代の千住宿に遡ります。千住宿は江戸四宿の一つで、江戸から各街道への出入口に位置する宿場町として発展しました。この江戸四宿は、交通の要衝として重要な役割を果たしていました。例えば、現在の新宿は、当時「内藤新宿」と呼ばれる宿場町を基盤に発展した地域です。北千住も新宿と同様、歴史的背景に規定されながら発展を遂げた街と言えます。
 江戸時代は、現在の日本の原型が形成された時代です。このように、江戸時代以降の地域の歴史を学ぶことは、現代の地域を深く知ることにつながります。大学での学びという観点から見ても、地域の歴史を学ぶことは、身近な地域で歴史学を実践する貴重な機会です。それは、学生にとって自分たちの生活の場である地域を改めて見つめ直す契機にもなるでしょう。
 私は特に足立区の歴史を重視していますが、地域の歴史を学ぶ方法論を修得すれば、他の地域にも応用が可能です。近年、「地域おこし」や「まちづくり」といった活動が注目されていますが、それらは地域コミュニティの再生を目指した取り組みです。江戸時代の足立郡では、千住宿を中心に様々な地域社会が形成され、有能な地域リーダーによって運営されていました。こうした歴史を学ぶことで、地域コミュニティ再生のヒントを得ることができるのです。
 高校生の皆さん、未来大で地域の歴史を学ぶ方法論を修得し、足立区はもちろん、皆さんの住む地域の活性化に貢献してみませんか。

モチベーション行動科学部

山﨑 善弘

山﨑 善弘
(YAMASAKI Yoshihiro)

プロフィール
専門:日本近世・近代史
略歴:関西大学大学院文学研究科史学専攻博士課程後期課程修了。
神戸大学大学院人文学研究科地域連携センター研究員、
奈良教育大学教育学部准教授を経て現職。
2020年にハーバード大学東アジア言語・文明学部の招聘研究員に就任。

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