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言語と文化 ― 母語の大切さ

投稿日:2023年01月19日

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 皆さんご存じのように、アメリカにはネイティブアメリカンという先住民がいます。彼らは、独自の文化と言語を持ち、自然を大切にしながら、生活をしています。
 しかし、アメリカ大陸がヨーロッパの国々により、植民地化されていく過程で、東海岸に住んでいた彼らは、土地を追われ、西へと移動しました。いくつかの大きな戦争後、アメリカに支配されることになりました。もちろん、今では、人権が保障され、文化や言語の保持が保障されています。私は、彼らが失ったもののうち、一番大きかったのは、母語だと思います。今では、母語の大切さを実感している人々も多く、アラスカ州では、小学校等で母語教育が行われています。しかし、ネイティブとして話せる人は、残念ながら、減少傾向にあります。
 遠い異国の話のようですが、同じことが日本国内でも起こっています。平成21年に、ユネスコがアイヌ語、八丈語、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語の8つを消滅の危機に瀕する言語に指定しました。これを受け、沖縄県では、しまくとぅば普及センターを設立し、しまくとぅばの普及活動をしています。離島へ行く飛行機の機内アナウンスやバスの車内アナウンスも、しまくとぅばが使用されています。北海道でもアイヌ語の普及活動をしており、ウポポイ(民族共生象徴空間)の公用語の1つは、アイヌ語です。ウポポイの最寄り駅の到着案内もアイヌ語が使用されています。
 なぜ言語が大切なのでしょうか。それは、言語の背景には文化があるからです。言語が消滅してしまうと、文化も消滅してしまいます。文化は、言語によって継承されていきます。例えば、しまくとぅばの歌が歌い継がれたとしても、歌詞の意味がわからなくなってしまったら、どうでしょうか。ただリズムを楽しむだけになってしまい、歌詞の意味が消滅してしまいます。文化を守るためには、言語を守る必要があります。このブログを読んでくださっている皆さんの中で、方言を話す人は、実感できませんか。感情表現など、方言の方が気持ちを表していませんか。
 また、言語は自身のアイデンティティのためにも重要です。海外で生まれ、育った外国人の子ども達は、母国語を話せなくなることが多いです。自身のルーツを確認し、自尊感情を高めるために、継承語として言語を教えていこうという取り組みも行われています。母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会が2018年に発足し、「日本在住の幼児・児童・生徒・学生・成人のバイリンガル教育(母語教育や3言語以上のマルチリンガル教育を含む)、および海外の日本人や日本語に関わるバイリンガル教育の向上を目的」として活動しています。
 言語は人類の豊かで、貴重な財産です。次世代へ継承していくことが大切です。沖縄県と北海道の取り組みと継承語の取り組みは、ネイティブスピーカーを育てることというよりは、自身の文化を大切にするために、日常会話程度の言語習得を目指していると思います。この取り組みが、継続され、言語の大切さを多くの人が理解し、共有できる多文化共生の社会が実現するといいと思っています。

しまくとぅば普及センターについて

母語・継承語・バイリンガル教育(MHB)学会 「この学会について」

モチベーション行動科学部

田中 真奈美

田中 真奈美
(TANAKA Manami)

プロフィール
専門:国際・多文化教育
略歴:University of San Francisco 教育学部修士課程教育カウンセリング専攻 修了
University of San Francisco 教育学部博士課程国際・多文化教育学専攻 修了

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