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Book SmartとStreet Smartを結びつける。

投稿日:2023年05月25日

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 「あなたなら、商品を買ってもらうために、どのようなことをしますか?」
 授業でこの質問をすると、多くの学生が「ユーチューバーやインフルエンサーにSNSで商品を紹介してもらう」と回答します。これは、現役の社会人に聞いてみてもよくある回答です。

 わたしは、前職で経営企画部ゼネラルマネージャーとして、航空機チャーター事業の立ち上げに携わっていました。そこでは、マーケティング責任者も兼任しており、「いかにお客様に買ってもらうか」ということを考えていました。
 当時のわたしが考えた施策は、冒頭のような「有名人にアンバサダーになってもらいSNSで商品の紹介をしてもらう」というものでした。起用したアンバサダーは、サッカーW杯の元ドイツ代表選手とスノーボードのオリンピックメダリストです。SNSフォロワー数はそれぞれ441万人、3万人と十分な数でした。アンバサダーには、入団発表のセレモニーやプライベート旅行などで自由に乗ってもらい、その都度SNSで情報発信をしてもらいました。毎回、世界中から「いいね!」や「わたしもほしい!」というコメントがあり、リツイート数も多く、「これで売れる!」と思っていました。しかし、結果は満足のいくものではありませんでした。商材が高額だったため、認知度は高まってもすぐに購買までには結びつかなかったのです。この原体験で、わたしは有名人にSNSを使って情報発信してもらっても、認知と購買までには大きな隔たりがあるのだということを学びました。
 ところで、インターネット時代の消費者購買行動モデルのひとつに、AISASモデルというのがあります。これは、株式会社電通が開発したモデルで、Attention(認知・注意)→ Interest(興味・関心)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)の頭文字を組み合わせた呼び名で、消費者が商品を知ってから購買するまでの流れを示したものです。消費者は、何かしらの情報によって商品を知ります。商品に興味関心を持つと、インターネットの検索サイトでより詳しい情報を収集し、類似商品と比較検討してから購買に至ります。その後、購買の感想や使用状況を、たとえばSNSで「映える」写真とともに他者に共有します。その共有された情報を見た別の消費者は購買意欲が刺激され、購買を検討するというモデルです。
 わたしの失敗例のように、体験を通じて得た知恵をStreet Smartといいます。他方、AISASモデルのような文献やしきたりなど、先人の知恵を借りながら得た知識をBook Smartといいます。
 ときどきStreet SmartとBook Smartを二項対立で議論することがありますが、わたしは環境の変化が速く激しい、見通しの立ちにくい時代には、この二つを結び付け、走りながら考えることが大切なのではないかと思います。実際に目の前で起きている現象に合わせて、頭の中の引き出しから先人の知恵を取り出して、当てはめていく。当然、そのまま適合できることは少ないですが、理論や枠組みに当てはめることで、主張に対する説得力が増すだけでなく、目の前の課題に対して効率的に、しなやかに修正や変更ができると考えるからです。このような考えのもと、ゼミではマーケティング理論を学び、日常生活で試してみる(そして失敗してもらう)ことを意識しています。
 先日、ゼミのOB・OGが近況報告に来てくれました。彼ら彼女らの話を聞いていると、Book SmartとStreet Smartを結びつけながら日々の仕事に取り組んでいる様子がうかがえました。この取り組み方は、ゼミだけでなく、本学部の特色である「理論」と「実践」の両輪で学ぶという考えに共通するものだと思います。
 社会人になってもこの取り組み方を忘れずに、仕事を通じて成長している彼ら彼女らの5年後の未来の姿が楽しみです。

参考文献:青木幸弘・新倉貴士・佐々木壮太郎・松下光司著(2012)『消費者行動論』有斐閣アルマ

モチベーション行動科学部

三浦 卓己

三浦 卓己
(MIURA Takumi)

プロフィール
専門:マーケティング、消費者行動、ブランド
略歴:ビジネス・ブレークスルー大学大学院経営学研究科経営管理専攻 修了
法政大学大学院経営学研究科経営学専攻マーケティングコース 修了
国内外金融機関、地方創生を目的とする事業会社を経て教員に転身。
東京未来大学非常勤講師を経て現職。

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