「応援」とは何でしょうか。声援や拍手といった身体動作を伴う具体的な活動を通じた応援もありますが、一方で客観的な活動を伴わない応援、あるいは本人自身でも気づいていない内的な感情としての応援など、様々な形態を通じた応援があり得ます。
そうした応援の典型的な事例として、日本の学校では、スポーツ大会や体育祭などにおける応援をコントロールする「応援団」が組織化されていることが多々ありますが、そのあり方や実際の応援時における声援ならびに身体動作の様式にはさまざまなものが見られます。
応援における応援団の役割には主に、①個々の応援をリードすることによって集合的な応援活動としての上昇をはかる、②犯罪の可能性をはらむような危険性の高い個々の応援活動の抑制をはかる、といった両面があります。そして、そのような応援現場に要する統制力を発揮するための発声、身体動作、スタイルが用いられてきました。これが皆さんよくご存じの応援団のエール、応援歌、演技、学ランや袴(服装)、応援団旗、楽団による演奏だったりします。
これらのなかでも応援団の発声ならびに身体動作は、個々の団員の技量に依存する部分となるため訓練を要します。なお、それらの熟達されるべき基準がどういったものであるのか、その存在の有無を含めて調査や実験をしてきた結果(拙著『初等・中等教育と特別活動:学校における応援活動』ムイスリ出版・2021年)では、そこに一定の価値や尺度の存在が浮かび上がっております。例えば、演技においては手足を激しく動かす一方で体幹はぶれておらず、かつ、個々の動作に留め・切れを有するといった非日常的な身体動作の価値基準が存在しています。
そして、発声には遠達性(いわゆる遠鳴り)につながる音圧や周波形がみられるという発見がありました(杉本・岩崎・金塚「高等学校における応援部の応援技法に関する考察 : 発声技法の習熟に焦点をあてて」『比較文化研究』145号109-119)。これらは、大勢の観衆の応援を統制・リードするために欠かせない視覚・聴覚的な資質であり、その能力向上を目指して鍛錬を重ねてきた学校文化の歴史があったわけです。