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写真映りが悪いのは気のせい?

投稿日:2026年01月30日

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 みなさんはスマートフォンでどんな写真を撮っていますか?旅行先での観光スポットやきれいな景色、おいしそうな食べ物、普通の日に友達と、などなど、いろんな写真を撮っている人が多いのではないかと思います。私はというと、息子の写真が9割超えで、あとは旅先でのグルメ(食べる前に撮るのを忘れて食べかけだったり…)、備忘録的な写真(撮って大丈夫と思って忘れちゃうことも…)とかがちょこちょことあるくらいです。自分が映っている写真はほとんどなくて、自撮りした写真なんて皆無と言っていいほど。どうも写真映りがよくなくて、撮られるのがあまり好きではないのです。この記事のページに載せる写真を撮ってもらったときも、カメラマンに「先生、笑顔が素敵ですね~」と言ってもらって、それはそれで嬉しいのですが、写真を見るとやっぱり映りがいいとは思えない…。写真の自分がいつもの自分とはちょっと違う感じがするんですよね。でもこの感じ、気のせいではないようなのです。どういうことか。私が担当している社会心理学の授業では、模擬的な実験を体験してもらって心理学的な現象を学んでもらう機会を設けているのですが、そのうちの1つを紹介して考えてみたいと思います。よろしければ自分でもやってみてください。
 実験の手順ですが、まず、自分の顔の写真をスマートフォンで撮ります(自撮りでも誰かに撮ってもらってもOKです)。この写真をAとします。次に、この写真を画像編集できるアプリやウェブサービスなどで左右反転させます(回転ではないことにご注意!)。こちらの写真をBとします。写真AとBは左右対称の関係になっているはずです。そして、これら2枚の写真を自分で見比べて、どちらが良い写真だと思うか、選びます。ここまでで終わりでもいいのですが、できれば仲の良い友達や家族など身近な人にも写真AとBを見せて、どちらが良い写真だと思うかを選んでもらってください。これで実験でやることは終わりです。
 ここ数年の授業で、この模擬実験に224名の学生が協力してくれたのですが、自分の選択の結果としては、29.0%(65名)が写真Aを、71.0%(159名)が写真Bを良い写真として選んでいました。一方、身近な他者の選択結果としては、58.5%が写真Aを、41.5%が写真Bを選んでいて、自分と他者で選ばれやすい写真が逆になっていました。
 この逆転現象を理解するためのキーは、「単純接触効果」と呼ばれる現象です。単純接触効果は、特定のモノに何度も繰り返し接触(見たり、聞いたり、触ったり)すると、そのモノを好ましく感じるようになるというものです(Zajonc, 1968)。ここで、「私の顔」を何でよく見ているか(繰り返し接触しているか)を考えてみます。「私の顔」は自分では直接的に目で見ることはできず、鏡を通して見ることが多いでしょう。一方で、他者は「私の顔」を直接見ることができます。写真Bには鏡に映った「私の顔」が、写真Aには他者が直接見ている「私の顔」が映っていますから、単純接触効果を考慮すると、自分は鏡に映った「私の顔」が記録されている写真Bを好ましく感じると考えられます。他者が写真Aを好ましく感じるのも、同じように考えるとその理由が分かります。つまり、自分と身近な他者では、よく見ている「私の顔」が左右逆なので、好ましいと感じる「私の顔」も逆になると言えます。
 これで、写真の自分がいつもの自分とはちょっと違う感じがする理由が分かりましたね。写真の自分は鏡を通して見ている自分と左右が逆なので違和感があると考えられます。そして、この違和感が「自分は写真映りが悪い」につながっていると思われます。と、頭では分かっているのですが、やっぱり私は映りが良くないと思ってしまいますし、写真を撮られるのは苦手です…

<引用文献>
Zajonc, R. B. (1968). Attitudinal effects of mere exposure. Journal of Personality and Social Psychology, 9, 1-27.

モチベーション行動科学部

埴田 健司

埴田 健司
(HANITA Kenji)

プロフィール
専門:社会心理学
略歴:一橋大学社会学部卒業。
一橋大学大学院社会学研究科修士課程、同博士後期課程修了。博士(社会学)。
追手門学院大学心理学部特任助教、東京未来大学モチベーション行動科学部講師を経て、現在は同大学同学部准教授。専門は社会心理学。

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