
医療技術の進歩により、これまで救うことが難しかった命が助かるようになりました。その一方で、人工呼吸器や経管栄養など、日常的に医療的ケアを必要とする子どもたちが、地域で暮らす姿も少しずつ増えています。彼らは「医療的ケア児」と呼ばれます。
かつては長期入院が前提だった子どもたちが、今では保育所や学校、地域のイベントにも参加できるようになりました。こうした変化の背景には、医療の進歩に加え、ご家族のたゆまぬ努力や支援者の存在、そして「ともに生きる社会」を目指す意識の広がりがあります。
私は育児工学や医療福祉に関する研究を通じて、この変化の最前線に触れてきました。昨年、私が大会長を務めた「第4回日本小児リハビリテーション医学会学術集会」では、医療者や研究者だけでなく、多くの医療的ケア児とそのご家族にもご参加いただきました。会場には、吸引や経管栄養に対応したケアスペースを整備し、子どもたちが安心して過ごせる遊びのコーナーも設置。障がい児やきょうだい児と交流した学生たちは、学会運営を通じて実践的な学びを深めることができました。
学生統括として活躍してくれたのが、486gで生まれたゼミ生の坂井立くんです。彼は、超低出生体重児として誕生し、長期の治療やフォローアップを経て、現在はゼミのリーダーとしてだけでなく、大学の自治委員会本部長として後輩を支えています。自らの経験を活かして他者を支える姿は、「ともに生きる社会」の可能性を力強く示してくれました。
本学では、医療的ケア児に対応できる実践的な人材の育成にも力を注いでいます。足立区の看護師の皆様の協力のもと、毎年約300名の学生が喀痰吸引の実習を受けています。将来、保育士や教員、児童指導員として現場に立つ学生たちが、適切な知識と配慮をもって子どもたちと向き合えるよう、教育体制を整えています。
さらに、東京電機大学や特別支援学校と連携し、医療的ケア児のための支援機器を開発するハッカソンも毎年開催しています。学生たちは医療・工学・福祉の視点を融合させ、当事者の声を起点に社会課題の解決に挑んでいます。
そして今年8月9日(土)には、足立区の大型施設「ギャラクシティ」を会場に、障がい児とそのご家族のためのインクルーシブコンサートと体験型イベントを開催予定です。音楽やアート、ふれあいを通して、誰もが安心して楽しめる空間を、地域と学生とで共につくりあげていきます。
これからも私は、研究・教育・地域連携の三本柱を軸に、医療的ケア児とその家族に寄り添いながら、「ともに生きる」社会の実現に向けて歩みを進めてまいります。
ギャラクシティ
インクルーシブあくしょん!
【第一弾】「声を出してもいい鑑賞会」
2025年8月9日(土)16:00~16:50
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前列中央にいるのが、486gで生まれたゼミリーダーの坂井くんです。




