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まだまだ続く、「あーしまった」

投稿日:2022年07月07日

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 ついこの間のこと、カウンセリングを1セッション終えた後、この、「あーしまった」をまた経験しました。

 私は、現在、近県のある中学校で、カウンセリングを毎週1日ずつ行なっています。1987年に、アメリカ、NY市の運営するアジア系メンタルヘルスサービスというところで始めて以来、ずっとこの仕事を続けています。この間、個人開業をしたり、特別支援学校、通常の学校、病院などでも働いてきました。今も、この仕事が好きなので、やれるところまでやろうと思っています。

 3~4歳の幼児の言葉の発達の遅れに関する行動療法や、特別支援学校での勤務、ご家族のいらっしゃらないご老人の、訪問セラピーなども含め、この仕事について三十数年になります。

 しかし、先日また、この「しまった」をやってしまいました。つまり、カウンセリングを終えた後、しばらくして、「こちらの言いたいことをついしゃべりすぎて、クライアントの話をじゅうぶんに聴かなかった」ことに、じわじわと気が付くのです。「あーしまった」、となります。

 これをやってしまうと、せっかく、大変な思いをしてカウンセリングを受けようと決断して、来てくださったクライアントの方の期待を、裏切ることになってしまいます。

 カウンセリングに見える方は、多くの場合、一定の期間その問題を抱えて悩んだり、つらい思いをしておられます。だからこそ、カウンセラーとしては、なんとかお役に立ちたい、そのためには、クライアントの話を、常に、「集中して、よく聴く」ことが重要になります。

 それなのに、なぜこうなってしまうのか、考えてしまいます。そして、現在自分が思っていることは、クライアントに相対したときに、つい、「自分の考えやニーズに集中しすぎてしまい、クライアントの話したい事柄や話したいという心理的ニーズに向き合うことが、おろそかになっている」のだと、思い至ります。

 今している、この反省が始まったのは、2~3年前からのように思います。その時も、あるクライアントが、1年以上通ってきていた時、クライアントの方から、やめたいと言ってきたのです。そのようなことは、さほど珍しいことではなく、経過も良い状態にはなっていたので、内心もう少し続けた方がよいかと迷いもしたのですが、クライアントの気持ちを尊重しました。

 最近行き着いた結論としては、カウンセリングはクライアントのためのものであるので、どの様な状態を目指すかだけでなく、どの程度までそれを行うかということも、クライアントに任せるということがよいのだろうということです。そう考えれば、ふっと、肩の力が抜けるのを感じます。この感じで臨めば、おそらく、クライアントの話を、もっと良く、時間をかけて聴くことが出来るのではなかろうか、と思うこの頃です。

 これから、そうできますように — 。

こども心理学部

近藤 俊明

近藤 俊明
(KONDO Toshiaki)

プロフィール
専門:臨床心理学、学校心理学、認知行動療法
略歴:早稲田大学第一文学部哲学科卒業。
1981年渡米、NY市立大学心理学修士課程、ホフストラ大学臨床・学校心理学博士課程卒業、Ph.D.、スクールサイコロジスト、サイコロジスト免許取得。
NY市立アジア系メンタルヘルスサービス、特別支援学校、病院勤務の後、NYにて開業。2001年帰国。
東京福祉大学教授を経て、東京未来大学教授。埼玉県スクールカウンセラー。

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