モチベーション行動科学部
モチベーション行動科学科

モチベーション行動科学部への招待

第7回 目標とモチベーション(1)

モチベーションは目標のあるところに生まれます(忘れてしまった人は、コラム第2回をもう一度読んでください)。モチベーション理論の大きな柱の一つである目標設定理論は、目標とモチベーションの関係をさまざまな角度から探り、これまで多くの研究成果をあげてきました。
ここからの何回かは、目標設定理論に基づいて、モチベーションを刺激する効果的な目標の立て方についてみていくことにします。

(1)曖昧な目標よりも具体的な目標を立ててみよう
 先生があなたの実力を見込んで、ある仕事を頼みました。先生から「ベストを尽くして頑張ってくれ、期待してるぞ!」と言われたあなたは、自分の力を認められたこともあって、モチベーションはいやがうえにも高まります。
 ところが、一生懸命がんばった結果を意気揚々と先生に報告に行きましたが、先生はどうも渋い表情です。あなたにしてみれば、「ここまでできれば自分としては満点に近い」と自信をもってやったのに、先生はなにか不満そうです。結果を認めてもらえないあなたも不満です――。
 なぜこうした食い違いが生じたのでしょう?
 それは、到達すべき目標が具体的に示されていなかったからです。先生にとっては、あなたならこれくらいできそうだ(仮にこのレベルを10とします)という期待があり、一方あなた自身はここまで(これを先生のレベルで見たら7とします)できれば上出来、自分としてはベストだという思いがあります。
 つまり、先生とあなたの間では初めから期待のレベルが違っていたのです。ですから、あなたにとっては100パーセントに近い出来だと思っても、先生にとっては期待を裏切る不満足な出来であったということになってしまいます(図)。
 先生のことばにあった、ベストを尽くして頑張れというタイプの目標を「最善型目標(英語ではdo-best goal)」といいます。
これも一つの目標には違いありませんが、目標のレベルが具体的に示されていないために、どこまで頑張ればいいのかが明確ではありません。

もし先生が、いついつまでにここまでやってきてほしいと、具体的な指示を出してくれれば、あなたは先生の期待に応えるべく、自分で適切なプランを立てて実行できたかもしれませんし、先生もあなたの努力を相応に評価してくれたでしょう。
このように、目標は曖昧なものよりも具体的なものの方が、持っている力を引き出せる可能性が大きいのです。できるだけ具体的な目標を立てることが、モチベーションを高めるコツといえます。

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